東京高等裁判所 昭和28年(う)3119号 判決
被告人 金玉
〔抄 録〕
論旨第一点。
本件記録に徴せば、本件公判廷において通訳人を付して審理をしたのは、第十九回乃至第二十四回公判期日のみであつて第一回乃至第十八回公判期日には通訳人を付していないことが窺えるのであるが、仮に被告人が日本語に通じない者であること所論のとおりであつて右通訳人を付して審理しないことが刑事訴訟法第百七十五条に違背するものとしても、原審は一旦終結した弁論を、通訳人を付した第二十四囘公判期日において再開し公判手続の更新をして審理をしていることが右期日の公判調書の記載によつて明白であつて、原判決の基礎となつた訴訟手続は右期日における訴訟手続のみであるから、前記法条違背は判決に影響を及ぼすことの明らかなものということはできない。又原審において証拠として採用取調を了した被告人の麻薬取締官及び検察官に対する各供述調書が通訳人を付しないでなされたため仮に所論のような違法があるとしても、右各供述調書は原判決において犯罪事実認定の証拠に採用していないのであるから、これ亦判決に影響を及ぼすことの明らかなものということはできない。故に原判決には所論のような判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違背は存しないから論旨は理由がない。